韓国社会、安全軽視の病巣深く(真相深層)

韓国社会、安全軽視の病巣深く(真相深層)
2014/5/3 3:30

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韓国南西部の珍島近くで沈没する「セウォル号」(韓国海洋警察提供)=聯合共同


 韓国の南西部・珍島沖で4月16日に起きた旅客船「セウォル号」沈没事故は、死亡・安否不明者が300人を超す惨事となった。乗客を見捨てて逃げ出した船長はもちろん、運航会社や政府の対応にも批判が集まる。いくつもの人災が絡み合う姿は、成長最優先で安全を軽視してきた韓国社会のゆがみが凝縮されているかのようだ。

■研修費年5万円

 セウォル号は中古の旅客船。客室などを増やすための改造で重心が上がった船体に、安全基準を上回る貨物を載せていた疑いが濃い。不安定な船体が急旋回でバランスを崩して横転したとみられている。

 運航会社、清海鎮(チョンヘジン)海運の安全意識はあきれるばかりだ。昨年の船員らの研修費はわずか54万ウォン(5万4千円)。広告宣伝費は2億3千万ウォン、接待費は6060万ウォンだった。船長を含め多くの乗組員は非正規職だ。

 「安全軽視」はセウォル号にとどまらない。韓国メディアは、事故直後にもかかわらず、過積載で一時、出航をとめられた船舶や、立ち乗り客を乗せた定員オーバーのバスが高速道路を疾走する実態を報じている。

 韓国ではこれまでも百貨店が突然、崩壊するなど信じられない大事故があった。そのたびに無理な改築や手抜き工事、安全管理のずさんさが指摘されてきた。教訓が生きないのはなぜか。

 韓国中央大の申光榮(シン・クァンヨン)教授は「不正な手段を使っても、成果を出せば正当化される風潮がある」と話す。皆がやるからやめられない。韓国紙には「過積載で捕まるのは運が悪いから」という関係者の証言が載っている。

 結果至上主義がはびこる背景には産業化の歴史がある。韓国経済は1970年代の「漢江の奇跡」や97年の通貨危機後のV字回復を経て、短期間で急成長した。1人当たり国内総生産(GDP)は70年からの30年間で74倍の2万ドル(約206万円)になった。日本は4万ドルを超えているが、同時期の伸び率は21倍だ。

 「圧縮成長」と呼ばれる成功物語。その陰には国を挙げての努力があった。ただ財閥を中心とする企業が利権獲得や規制逃れ、模倣などによる「手っ取り早さ」を求めてきた面も否定できない。いきおい、順法意識は後回しになる。

 セウォル号事故では、職業倫理に欠ける船長らの行動が非難の的だ。一方で、脱税、背任、横領などの罪で有罪になりながら復権し、巨大企業グループを支配する財閥オーナーらと比較して語られることも多い。

 清海鎮海運の事実上のオーナーも、過去に詐欺罪で有罪判決を受けながら富を築いたいわく付きの人物だ。世論調査をすれば「お金持ちは不正な方法でもうけた人が多い」とする回答が6割を超す。職業倫理が育たないのと、成功者が尊敬されない現象は、根っこでつながっている。

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■官民癒着に不信

 救助者数など重要な発表を何度も訂正した政府への信頼は地に落ちた。現場での不手際と同様、深刻なのは海運行政への不信だ。すでに船舶や積み荷の安全性を検査する機関や組合に問題がなかったか、捜査が始まっている。

 こうした組織には海洋水産省のOBが多数、天下りしていた。官僚や公営企業と業界の癒着が疑われるのもこの一件に限らない。昨年は原子力発電所で欠陥部品の使用が発覚。書類偽造や賄賂提供などの不正疑惑に発展して騒ぎになった。

 珍島沖で安否不明者の捜索が続く中、2日にはソウルで地下鉄の追突事故が発生。約240人の負傷者がでた。「安全」が世界8位の貿易大国を揺るがしている。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は4月29日の閣議で「安全システムを全てつくりかえる。国家改造をする気持ちで取り組んでほしい」と語った。病巣の深さを考えると、決して大げさな表現ではない。問題は実行できるかどうかだ。

(ソウル=内山清行)

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